徳洲新聞2026年(令和8年)6/8月曜日 NO.1546より
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国内外の災害現場などで医療支援活動を展開するNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は5月17日、WHO(世界保健機関)の緊急医療チーム(EMT=Emergency Medical Team)認証を取得した。世界で65番目、NGO(非政府組織)としては国内初の取得。TMATが取得した認証のカテゴリは、1日当たり最低50人の外来患者に対応する移動型の診療チームである「Type1 Mobile」だ。
EMT認証は、大規模災害などが発生した被災国に派遣される国際医療チームの質を担保するために、WHOが運用している認証制度。EMT認証を取得するには、WHOが策定した基準をクリアしなければならない。

審査を終え、あらためて災害医療への思いを深めた審査団とTMAT隊員ら

ケイシー審査チームリーダー(左)からEMT認証書を受け取る福島TMAT理事長
具体的には、自己完結型の医療チームとしての基本理念や組織体制、治療行為の標準手順、ロジスティクス(物資や通信手段の確保、連絡、調整、情報収集など)体制、水や汚物・廃棄物処理にかかわる衛生上の体制などに関する最低基準を規定。これらに基づいた業務標準手順書(SOP)を作成・遂行する能力が求められる。
TMATは2021年、WHOに認証取得のための申請を行った。その後、メンター(指導者)が決定し、本格的に準備を開始。以降、チェックリストを用いた自己評価や、メンターとの定期的なオンライン会議による助言を受けながら、SOPの策定や資機材の整備、実際の運用を想定したフィールドホスピタル(FH)展開訓練など実施してきた。

審査員がFH内を巡回し実際の診療手順などを確認

WHO EMT Type1 Mobile認証書。審査員とメンターが署名
展開訓練では、TMATが所有する大型テントや資機材を用い、活動拠点とする診療所や、宿泊用テント、発電機、廃棄物処理装置、トイレなどを実際に設営。模擬患者による診療訓練などを通じ課題を洗い出し、改善を重ねた。
災害医療のあり方などを議論するEMTグローバルミーティングにも積極的に参加した。

審査会場となった四街道病院の駐車場に設営したFH
TMATメンバー全員が一致協力 ゴールではなく新たなスタート
5月16、17日の2日間、四街道徳洲会病院(千葉県)を会場とし、WHO関係者ら審査員によるVerification Visit(本審査)を受けた。ショーン・ケイシーWHO Regional EMT Secretariat/WHO WPRO(WHO地域緊急医療チーム事務局/WHO西太平洋地域事務局職員)を審査チームリーダーとする審査員4人、メンター3人、JDR(国際緊急援助隊)などからオブザーバー9人が同院に来院。TMAT側は野口幸洋・事務局長(一般社団法人徳洲会[社徳]医療経営戦略室課長)や合田祥悟医師(札幌東徳洲会病院集中治療センター副センター長)ら約50人の隊員が各々の役割をこなした。
初日は書類審査。TMATと母体である徳洲会の組織概要などを説明したうえで、野口・事務局長がSOPの要点を説明。審査員との質疑応答を繰り返し、WHO基準に適合しているか確認した。
2日目は実際の診療手順などを確認するため、同院駐車場に設営したFHでの審査を実施。診療所内での受付やトリアージ(緊急度・重症度分類)、記録、患者動線、処置室、隔離エリア、産科・緊急対応エリア、薬局、レントゲンエリア、また倉庫や電源・燃料、WASH(水・衛生管理)、食糧などについて、それぞれを担当する隊員が審査員に説明。ここでも審査員との質疑応答を繰り返し行った。
TMATの福島安義理事長(医療法人徳洲会最高顧問)をはじめ、橋爪慶人・副理事長(東大阪徳洲会病院院長)、八木沼正子理事(社徳看護部門本部長)、石川一郎理事(社徳本部長)らが帯同し審査の様子を見守った。
審査結果の発表で、ケイシー審査チームリーダーから「われわれはTMATがWHO EMT認証『Type1 Mobile』の基準を満たしていることを確認しました」と合格が告げられると、拍手が湧き起こった。とくに、①徳洲会を基盤とする安定した組織運営体制、②国際派遣に必要な自己完結型運用能力、③高い臨床対応能力、④医療廃棄物管理体制――が高く評価された。
福島理事長は「TMATは1995年の阪神・淡路大震災での医療支援活動を原点に設立され、これまで国内外合わせて40回の災害医療支援活動を実施してきました。30年以上にわたる経験と活動の積み重ねが、今回のWHO EMT認証という形で国際的に評価されたことを大変うれしく思います」と述懐。
続けて「認証取得をゴールとせず、『いつでも、どこでも、誰でもが、最善の医療を受けられる社会を目指して』という理念の下、今後も世界各地で災害に苦しむ方々への医療支援活動を継続していきたいと考えています」と、あらためて所信表明。
野口・事務局長は「TMATメンバー全員の協力により認証を取得できました。私たちの目的は、立派な資機材を被災地に持ち込むことではなく、一刻も早く被災地に行き医療を届けることです。TMATの理念を再確認し、今後さらに世界で活躍できるよう精進していきます」と意欲を見せる。
合田・副センター長は「日本のNGOとして初となるこの国際認証は、われわれが世界基準の『自己完結型』災害医療チームとして認められた証しであり、誇りに思っています。しかし、これはゴールではなく新たなスタートであり、TMATの理念の下、今後も皆さまのご協力をいただきながら、さらに質の高い支援を提供できるよう研鑽を続けてまいります」と抱負を語る。
「国際的な健康危機・災害医療に大きく貢献」
TMATをWHO分類によるEMT Type 1 Mobileとして検証でき、大変光栄に思います。2日間の審査でTMATは国際派遣可能なEMTとして必要な自己完結性を備えていることを証明しました。TMATは、今後の国際的な健康危機・災害医療対応に大きく貢献できる立場にあり、WHO西太平洋地域事務局(WPRO)としても、その活動を支援していくことを楽しみにしています。

審査チームリーダー Sean Casey(ショーン・ケイシー)WHO Regional EMT Secretariat/WHO WPRO
「世界中の被災者のために一層の貢献を期待」
TMATの皆さま、WHO EMT Type 1 Mobileの認証おめでとうございます。皆さまの努力が認められ、メンターとして非常にうれしく思っております。自己完結型のチームとして、世界中の被災者のために、ますますの貢献を期待しております。

メンター 甲斐達朗 外務省・国際緊急援助隊医療チーム医師、NPO法人HuMA理事長
「高い専門性と強い使命感が大きな力に」
この約5年間、TMATとともに歩み、認証取得までメンターとして支援と助言を行えたことを大変光栄に思います。かかわったすべての方々が、その献身と貢献に対して称賛されるべきです。TMATの高い専門性と強い使命感は、今後もEMT分野で、さらなる発展と活躍を続けていく大きな力になると確信しています。

メンター Anthony Cook(アンソニー・クック) NCCTRC/AUSMAT(国立集中治療・外傷対応センター/オーストラリア医療支援チーム)
「質の高い医療支援を提供できると確信」
SOPの改善やFH運営に尽力する専門性をもったTMAT隊員の姿勢は模範的なものでした。TMATは、緊急事態下にある世界中の人々を支援したいという純粋な思いで、つねに活動してきました。この並はずれた思いやりと専門性により、TMATが質の高い医療支援を提供できることを私は確信しています。

メンター Jan-Erik Larsen(ヤン=エリック・ラーセン) WHO WPRO
「徳洲会の人道的価値観が認められた証し」
日本のNGOとして初となるWHO EMT認証取得、誠におめでとうございます。また、そのような素晴らしいチームを育み、支えてこられた徳洲会グループの皆さまにも、心よりお祝いを申し上げます。
TMATは“生命だけは平等だ”という徳洲会の理念のまさに実践者であり、今回の認証は、TMATの医療技術や運営能力が国際基準に達したことを示すとともに、その根底にある徳洲会グループの普遍的な人道的価値観が世界に認められた証しでもあると感じます。

日本災害医学会 理事 久保達彦 世界災害救急医学会理事、広島大学大学院医系科学研究科教授、京都大学ヘルスセキュリティセンター教授
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