吹田徳洲会病院 水疱性角膜症へ角膜再生医療を施行 角膜移植しかなかった患者さんに光明

徳洲新聞2026年(令和8年)7/14月曜日 NO.1551より
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吹田徳洲会病院(大阪府)は徳洲会グループで初めてネルテペンドセル(商品名ビズノバ)を用いた角膜再生医療を導入、6月18日に6例目を施行し、これまで全例が予後良好に推移している。以前では重症の水疱性角膜症は角膜移植以外に治療選択肢がなく、国内ドナー(提供者)の不足などが課題となっていた。同療法の登場により、適応のある患者さんの治療までの期間を大幅に短縮できる。

角膜内皮細胞は角膜内の水分を一定に保つ機能をもつ。水疱性角膜症は、この角膜内皮細胞が何らかの原因により障害、減少することで、余分な水分を角膜外に出せず角膜が浮腫(水ぶくれ)の状態となり、角膜の濁りによる視力低下を引き起こすだけでなく、悪化すると角膜上皮がはがれ、激痛をともなうこともある疾患だ。

角膜内皮細胞は加齢とともに減少するものの、一般的には80代でも2,500個/1㎟程度の密度がある。しかし水疱性角膜症の患者さんは、「角膜内皮細胞が数えられないほど減少しているケースもあります」と吹田病院の眞野富也・副院長兼アイセンター長。

角膜内皮細胞は自然には再生しないため、いったん減少すると自然治癒はなく、従来は重症例には角膜移植しか治療手段がなかった。水疱性角膜症に対する角膜移植は、すべての角膜層を移植する全層角膜移植と、シート状の内皮細胞を移植する角膜内皮細胞移植(DSAEK)があり、ともに治療成績は良好。

これまで国内ではドナー数が少なく待機期間が長いこと、国内ドナーはほぼ高齢者であり40代、50代の患者さんが治療を受けると、将来的に再移植が必要となる可能性もあること、海外ドナーは輸送費や円安の影響を受け材料費が高額となるため、自費診療となる病院が多いこと(吹田病院では輸入角膜費は病院負担)など課題があった。

ネルテペンドセルを用いた角膜再生医療の手術時間は1時間程度

術後は、顔の部分に穴の開いているマッサージ用ベッドで3時間うつ伏せに

若いドナーの角膜内皮細胞を培養

新しく開発された再生医療等製品ネルテペンドセルは、若いドナーのヒト角膜内皮細胞を培養し増やしたうえで、それを患者さんの角膜内に移植する治療法。悪くなった角膜内皮を直径8mmの範囲で取り除き、細胞が付着しやすくなる還流液を流し、そこにネルテペンドセルを注入する。1アンプル当たり約130万個の角膜内皮細胞が入っており、臨床試験では24週後の角膜内皮細胞密度が3,000~5,000個/㎟程度に維持できていた。角膜の浮腫(水ぶくれ)も改善、術前0.1だった視力は24週後には0.8程度まで回復したという。

眞野副院長は研究段階から同治療法に注目、保険収載された2024年から準備に動き出し、同療法を研究開発した京都府立医科大学附属病院に手術見学、実習に向かい、昨年、認定証を取得した。同療法は1人のドナーの角膜内皮細胞から約50人分に相当する細胞を培養できるため、「海外の若いドナーから採取した細胞で多くの方の治療が可能となり、日本のドナー不足の解消に大きく貢献すると期待できます」(眞野副院長)。高額療養費対象のため、患者さんの経済的負担が少ないこともメリットだ。

手術は基本的に1泊2日の入院ですみ、「術後の経過観察は角膜の専門家でなくても可能なため、たとえば地方の病院から当院に治療に来ていただいた後、フォローアップは各地域の眼科クリニックにお願いすることもできます」(同)。なお、同療法で使用する培養角膜内皮細胞は作製後56時間以内に使わなくてはならない。

同院では毎月、奄美大島の名瀬徳洲会病院(鹿児島県)に応援診療に行っているため、「治療器具を持っていけば、将来的には離島・へき地の病院で治療することも可能だと思います」(同)と展望する。

国内30施設・大阪は吹田病院のみ

一方で、同療法には術後、前房内に入れた細胞が角膜後面に定着するまでの3時間、うつ伏せの体勢を続けなくてはならないという厳密なルールがある。3時間は寝てもならないため(寝ると眼球がわずかに顔の上方に動き、うまく角膜内に細胞が定着しない)、認知症など、うつ伏せを維持できない患者さんには施行できない。

「術後はできるだけ早くうつ伏せになるのが好ましいため、術後すぐに、顔の部分だけが開いているマッサージ用のベッドに寝てもらう訓練を、術前日に患者さんと行います」と眞野副院長は説明する。最も多い副作用は、一時的な眼圧上昇による眼痛で、33.3%に出るという。多くの場合はすぐに消失するが、感染症などの場合は処置が必要なため、うつ伏せを終えた後、副作用を十分にチェック、問題がなければ退院となる。

同療法は2026年6月時点、実施しているのは日本だけ(米国で臨床試験中)であり、自由診療であっても同治療を受けたいと海外から問い合わせが来るケースもあるという。全国で実施施設は30施設のみで、大阪府で実施しているのは吹田病院のみ(ともに26年6月時点)。眞野副院長は「前々から、移植医療がお金持ちだけの医療であってはならないと、国内ドナー不足に心を痛めていました。この治療法に適応がある水疱性角膜症の方に広まることを願っています」と思いを吐露する。

徳洲新聞2026年(令和8年)7/14月曜日 NO.1551より
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