徳洲新聞2015年 3月9日(月) NO.970

徳洲新聞2015年 3月9日(月) NO.970

大垣徳洲会病院
4次元放射線治療装置を導入
徳洲会初 2月に初症例

大垣徳洲会病院(岐阜県)は4次元放射線治療装置「Vero(ヴェロ)4DRT」を導入した。徳洲会グループの病院で初めて。同装置は3次元で腫瘍など病変部の位置を確認しながら治療を行う従来の放射線装置に、さらに時間の要素を加味。世界初のリアルタイムモニタリング下での動体追尾機能を搭載し、呼吸などで病変部が動いても追跡、照射できる。ただ、追尾機能を使いこなすには一定のスキルが求められる。同院は2月18日に初めてVeroを用いた治療を実施。今後、経験を重ね、追尾機能を生かした治療を行う意向だ。

より高い精度で病変部に照射

大垣病院が導入したVero4DRTは、2008年に開発された最新鋭の放射線治療装置。
より患者さんに安心・安全な放射線治療を可能にするために、従来の装置にはない機能などを搭載している。

最大の特徴は、放射線装置で世界初となるリアルタイムモニタリング下で行う「動体追尾機能」。
呼吸で病変部が動いても、その動きを追跡し照射するとともに、X線照射口の反対側に画像取得機器を設置することで、正しく病変部を追尾しているかどうかを常時モニターで確認できる。

いずれもVero独自の機能だ。
↑水野・診療放射線技師(右)と高田・放射線技師(第1種放射線取扱主任者)

一般的に、呼吸によって病変部が動くケースに対し放射線治療は、
①呼吸で移動する範囲まで含めて全般的に照射する方法
②病変部が一定の位置に移動したタイミングを見計らって照射する「呼吸同期照射法」
―を実施する。

しかし、前者は正常な組織にも相当量を照射するため、副作用が発現する可能性が大きく、また後者は正常組織への被ばくは避けられるものの、治療時間が長引くといった課題があった。

Vero4DRTは病変部を追い続けるため、照射範囲を最小限に絞り込み、正常な組織への照射を低減。
同時に、最小時間で照射が可能。

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↑4次元放射線装置「Vero」。さまざまな病変に精度の高い照射が可能

水野勉・診療放射線技師は、
「従来の装置は病変部の動きを考慮するため照射範囲が長形ですが、Veroは病巣に合った形。より範囲を絞り込んだスポット治療ができます。もちろん、病巣部の凹凸に対し、線量の強度を変えられるIMRTも可能です」

このほかにも、精度向上についてさまざまな工夫を施している。
放射線ビームを放出するガントリーをリング型構造にし、スウィングシステムを採用。
照射ヘッドがリングに沿って360度回転したり、ガントリーそのものが左右に旋回したりする。
これらを組み合わせることで、あらゆる病変部への照射が可能になり、患者さんは原則、カウチに乗った後は移動する必要がない。

 

さらに、照射ヘッドをジンバル機構に設計。
これは、ひとつの軸を中心に物体を回転させる回転台の一種で、軸が直交するようにジンバルを設置すると、内側のジンバルに載せたロータの向きを常に一定に保持できる。
このため従来の装置にある放射線ビームのひずみがない。
「これまでは回転しながら照射すると機器の自重によって“たわみ”が出て回転中心にズレが生じました。Veroでは、ほとんどありません」
と高田勇馬・診療放射線技師。

照射部分のずれを解消するため、治療開始前に患者さんをより正確にセットアップできる機能も装備。
事前に治療計画用に撮影したCT画像と、Veroで撮影した実際の画像とを重ね合わせ、どの程度位置がずれているかコンピューターが自動で算出。
調整した後、最後に医師が目視を行ってから治療を開始する。
治療中も、球状の反射体を患者さんに装着し、赤外線で確認。患者さんの位置や傾きを把握する。
水野・診療放射線技師は鮮明な画像を称賛。
「治療中もX線で放射線がきちんと病変部に当たっているかが、よくわかるので、安心できます。また、イメージ撮影はVeroでは患者さんを正面から撮影しているので見やすくて助かります」

 

大垣病院は2月18日、同装置による1例目を実施。乳がん患者さんで、無事に治療を終えた。
「次に押すべきボタンが光るなど操作性が良いのもVeroの特徴。初めてでも安心してできました」
と水野・診療放射線技師。

ただ、追尾機能を用いた治療を行うには「ある程度の習熟度が求められる」ため、同院は今後、同装置による治療を積極的に行い、経験を重ねたうえで、追尾機能を生かした治療を行う意向。
高田・診療放射線技師は
「放射線対象のがんであれば、すべて対応できます。まずは1日に20人を目標にして取り組んでいきたい」
と意欲を燃やす。
なお、同装置の開発会社によると、東海地域の医療機関でVeroを導入したのは、大垣病院が初めてだという。

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