医療用接着剤を用い血管内塞栓術 大隅鹿屋病院が下肢静脈瘤の新治療法

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徳洲新聞2021年(令和3年)5/24月曜日 NO.1288より
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医療用接着剤を用い血管内塞栓術 大隅鹿屋病院が下肢静脈瘤の新治療法

「グルー治療」鹿児島県で初

下肢静脈瘤は、脚の皮膚付近を走る静脈が、こぶ状あるいは網目状に盛り上がる病気。むくみ、かゆみ、色素沈着(静脈うっ滞)といった症状がある。直接的に生命を脅かすケースはまれだが、QOL(生活の質)の低下につながりやすい。

原因は、主に静脈の内側にある弁(静脈弁)の機能不全。通常、静脈には心臓に血液を戻す役割があり、脚の静脈も筋肉によるポンプ作用で心臓に血液を押し流していく。
静脈弁が血液の流れを一方通行にしているため、心臓が脚より高い位置にあっても血液は逆流しない。
静脈弁が機能しなくなると、心臓に血液が戻っていかず、静脈に圧がかかり血管が膨張、やがて瘤になる。下肢静脈瘤は男性よりも女性に多く見られる。

下肢静脈瘤の根治治療は弁不全を起こしている血管そのものにアプローチする。従来は、ストリッピング手術(弁不全を起こしている静脈を引き抜く)、血管内焼灼術(ラジオ波やレーザーによる熱で血管の壁を焼いて塞ぐ)だったが、19年12月にグルー治療が保険適用となった。

大隅鹿屋病院は昨年8月、「VenaSeal(ベナシール) クロージャーシステム」を導入し、鹿児島県で初めてグルー治療を実施。エコー検査装置で場所を確認しながら、専用のカテーテルで医療用接着剤を3㎝間隔に0.1㏄ずつ注入する。注入後はエコー検査装置のプローブ(探触子)で押さえ付け、血管を塞ぐ。

井戸・名誉院長は「当院では年間120件程度、血管内焼灼術を行っていますが、地域に下肢静脈瘤を治療できる施設は少なく、治療を受けるまで2年待っていただく時期もありました。治療の選択肢が増えたほうが患者さんにとって良いので、導入を決めました」と説明する。

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グルー治療を行う井戸・名誉院長(右)

傷口が小さく神経損傷リスクも低い

グルー治療の最大のメリットは、患者さんの負担が少ない点で、ストリッピング手術と比べて傷口が小さく、血管内焼灼術より神経損傷のリスクが低い。熱による痛みもないため、麻酔薬をほぼ使うことなく治療することが可能となる。

「焼灼術より時間を要するものの、痛みがほぼないため一度に両足を治療することもできます。治療後は運動制限や血流を改善するための弾性ストッキング着用といった制約は、ほとんどありません」(井戸・名誉院長)。

ただし、同治療は血管径12㎜以上のケースでは適用されない。「瘤が大きいと、血管が塞がらない可能性があるためです。さらに、アレルギー反応で腫れや、かゆみが出たりすることがあるので、アレルギーがある方にはお勧めしません」(同)。

同院は昨年8月以降、 下肢静脈瘤の治療を98件施行。途中で術式を変えることもあり、そのうち約50件がグルー治療という。同院の場合、患者さんは治療の1週間前に心電図など検査を行い、問題がなければ治療当日の朝に来院し昼には帰宅する。同治療を希望する患者さんは多く、現在、4カ月待ちの状態だ。

井戸・名誉院長は「今後も研鑽を積み、患者さんに最適な治療を届けたい」と意欲を見せる。なお、同治療は一定要件を満たさなければ実施できず、徳洲会では同院以外に庄内余目病院(山形県)、鎌ケ谷総合病院(千葉県)、吹田徳洲会病院(大阪府)が行っている。

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