湘南大磯病院 県から「認知症疾患医療センター」に指定 鑑別診断・専門治療・BPSD・身体合併症など対応

徳洲新聞2026年(令和8年)9/7月曜日 NO.1559より
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湘南大磯病院(神奈川県)は県から認知症疾患医療センターの指定を受けた。認知症に関する専門的な医療(診断・治療)の提供や地域連携の推進などを通じて、認知症の方々や家族が住み慣れた地域で安心して生活を継続していけるよう支援するのが同センターの役割。国が策定した認知症施策(認知症施策推進総合戦略=新オレンジプラン)の柱のひとつで、都道府県や政令指定都市が指定を行い各地に整備。同院は患者さんに寄り添い、人格の尊重を最優先に位置付けながら、認知症の方々が、より良い人生を送れるようサポートを継続していく。

認知症疾患医療センターの指定を受けるには、日本認知症学会などの専門医資格を有し、認知症の鑑別診断など専門医療に従事した実務経験を有する医師をはじめとする人員配置や、所定の検査体制、身体合併症やBPSD(行動・心理症状)への対応など、さまざまな基準を満たす必要がある。「基幹型」、「地域型」、「連携型」の分類があり、それぞれが同センターとしての機能を果たすとともに、分類に応じた役割も担う。

湘南大磯病院は地域に密着した病院として、他の医療機関や介護事業者などとの連携の推進役を担いながら、専門医療の提供などの役割が期待されている連携型として、5月1日付で指定を受けた。基幹型は県域の同センターを統括し、地域型は連携型と協働しながら、所在する二次医療圏の認知症医療の向上推進などが役割だ。神奈川県西部は指定病院が少なく、高齢化率が全国平均よりも高い地域が少なくないため、湘南大磯病院が果たす役割は大きい。

「より良い人生を送れるようサポートしていきたい」と高橋副院長(左)、市川看護師

新薬のレカネマブを用い専門治療

高橋若生・副院長兼脳神経内科部長兼認知症疾患医療センター長は「当院は、これまでも認知症疾患医療センターの役割である認知症の鑑別診断や早期診断・治療、グループ病院と連携することでアミロイドPET検査の提供、新しい機序の治療薬であるレカネマブを用いた専門的な治療、BPSDや身体合併症に対する治療、専門医療相談など、認知症診療に幅広く取り組んできました。これからは認知症の方々の支援に取り組む地域の保健医療関係者や介護・福祉関係者を対象とした研修会も実施していきます」と説明する。

早期診断の入り口として物忘れ外来を開設。認知機能テストや脳MRI(磁気共鳴画像診断)検査を行い、認知症やその前段階である軽度認知障害(MCI)を早期発見・治療し、できるだけ進行を抑えるのが狙いだ。

病棟ラウンド中も多職種が密に情報共有を行い、より良い治療・ケアを実践

認知症全体の約7割を占めるアルツハイマー型認知症は、長い年月をかけて脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積することで発症する。これを画像で可視化するのがアミロイドPET検査。装置を保有している湘南厚木病院と連携し、必要に応じて同院放射線科の山室博医師の協力の下で同検査を実施している。

新しい作用機序でアミロイドβを除去し、進行を抑制するのが抗アミロイドβ抗体薬。レカネマブやドナネマブがそれだ。適応はアルツハイマー病による軽度認知障害と軽度認知症。投与可否の判定には、アミロイドPET検査または脳脊髄液検査の実施が必要で、より低侵襲なのが前者だ。

患者さんへの抗アミロイドβ抗体薬の投与は、所定の診療・検査体制を備えていることが条件。湘南大磯病院はレカネマブの投与が認められている数少ない医療機関のひとつだ。中等度・重症例にはアリセプトなど既存の治療薬を用いて対応している。

また、認知症は高齢の方々が多く、転倒によるけがや肺炎、その他の持病など身体疾患の合併例が多い。同院は総合病院の強みを生かし、幅広い身体合併症にも専門的な対応が可能。地域の関係機関を対象に開催する研修会は、各施設の課題や悩みを共有し解決策を模索することなどが目的だ。

「患者さんの視点に立つ」第一に

認知症は、生活習慣を改善して発症を遅らせる“予防”が重要。高橋副院長は、食事、運動、他人との交流の3つを重視し、医療講演などを通じた啓発活動にも力を入れていきたい考え。

「患者さんの視点に立つということを第一に心がけています」と語るのは、認知症看護に携わる市川妃奈子看護師。続けて「認知症の方々が発する言葉や行動には必ず意味があると考え、その背景にある“困りごと”を深掘りするようにしています。たとえば、点滴を抜く行動に対しても、単純に制止するのではなく、その行動に至った理由を考える姿勢を大切にしています」と強調する。

市川看護師は認知症看護のスキル向上に力を入れ、認定看護師の資格取得に向け、昨年、教育機関でカリキュラムを修了。今年度の認定審査を受ける予定だ。合格すれば同院初の認知症看護認定看護師が誕生する。

ケアの質向上のため毎月開催しているのが認知症ケア委員会。高橋副院長や市川看護師、各病棟のリンクナース(各種専門チームと病棟看護師をつなぐ役割をもつ看護師)が参加し、認知症の患者さんの情報を共有。またリンクナースが各病棟からピックアップした要介入の患者さんを対象に、医師や看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフらで構成する認知症対応チームが、毎週水曜日の午後にラウンド(回診)を実施している。

市川看護師は「認知症は、核となる症状は改善しませんが、BPSDの出現は私たち看護師やご家族、周りの人の対応で大きく変わります。医師は疾患の悪化を防ぐ、またはその人らしく暮らしていくために病状維持を調整し、認知症看護を担当する看護師はBPSDの出現を最小限にするためのケアを大事にしています。そのためにまず、『認知症とは何か』を根気強く院内外へ発信していきたいと考えています」と抱負を語る。

高橋副院長は「認知症に関する地域住民の方々の不安を解消し、地域の認知症医療の向上に貢献していきたい。認知症は生涯にわたり付き合っていく疾患であるため、その人の人格を最優先にして、より良い人生を送れるようにサポートしていきたいです」と意欲を見せている。

徳洲新聞2026年(令和8年)9/7月曜日 NO.1559より
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