徳洲新聞2025年(令和7年)6/16月曜日 NO.1496より
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仙台徳洲会病院は、救急搬送の受け入れ体制確保を目的とした仙台市の「救急医療病院間連携推進事業」への参画を通じ、地域の救急医療の維持・確保に尽力している。同事業は救急病院の入院患者さんのうち、状態が安定した患者さんの後方病院への転院を促進し、新たな救急搬送を受け入れるための病床を確保するもの。同院では救急救命士や入退院支援室の看護師が同事業にかかわる業務を遂行。4月には救急救命士科を新設、救急救命士は同科に所属し、病院救急車を活用した転院搬送などで活躍している。
4月には「救急救命士科」新設
「これから〇〇病院に移動しますね。どこか痛むところはありませんか」――。
仙台病院救急救命士科の海上優輝・救急救命士が、ストレッチャー上の患者さんに優しく声をかけた。ここは同院が保有する救急車の車内。時間は午後2時5分。患者さんは80代女性で、腰椎圧迫骨折により10日ほど前に加療目的で同院に入院。その後、順調に回復してきたことから、リハビリテーションを継続するため、仙台市内の病院に転院することとなった。
これは“仙台市救急医療病院間連携推進事業”の仕組みを活用して患者さんを転院搬送する場面のひとコマだ。入院を必要とする救急搬送患者さんを受け入れる病院を「救急受入病院」、状態が落ち着いた患者さんの転院を速やかに受け入れる病院を「支援病院」とし、後者への補助金交付(一定の条件あり)によって、スムーズに転院調整を図ろうというのが同事業だ。
救急病院で治療を終えた患者さんを転院搬送することは、一般的に“下り搬送”と呼ばれる。下り搬送で救急病院の病床を確保し、救急の応需率向上を目指すのが狙いだ。
救急車に乗車後、海上・救急救命士が患者さんに付き添い、大澤淳貴・救急救命士が運転、伊藤悠・救急救命士が助手席でサイレンを鳴らすボタンの操作や、マイクで走行中に周囲へ注意を呼びかける役割を担った。
乗車後、すぐにバイタルを測定。病院の敷地を出て幹線道路に入ると、サイレンを鳴らして走行を開始した。伊藤・救急救命士が「救急車が交差点に進入します。直進します」などとマイクで呼びかけて安全確保に努め、午後2時27分、入院先に到着し病棟で引き継ぎを行った。

(左から)鈴木・看護主任、大澤・救急救命士、伊藤・救急救命士、海上・救急救命士、菊地・救急救命士

救急車の資器材の確認を念入りに行う南浦・救急救命士(右)と米澤・救急救命士
申し込みから通常3~4日 早期に転院先が決定する!
同事業はWEB上の専用システムでマッチングを行う。昨年9月にスタートし、同院は11月から救急受入病院として参画。同事業の業務に携わるのは、4月に新設した救急救命士科に所属する7人の救急救命士と、入退院支援室の2人の看護師だ。
鈴木貴恵・看護主任は「下り搬送事業の仕組みを使わない一般調整と比べて、迅速に返事をもらうことができ、申し込むと早い段階でベッドを空けてくれるので、だいぶ短いスパンで転院が決まるようになりました。一般調整では1週間から長いと1カ月近くかかることもあります。一方、この事業では申し込んでから通常3~4日と早期に転院先が決まります」と説明。
同院の救急救命士は、転院搬送業務に加え、救急搬送の受け入れ調整・対応や、診療所・病院から緊急の入院依頼があった場合に病院救急車で出向く“お迎え救急”などに従事している。
「増加傾向で現在では1日当たり平均2~3件、同事業に基づく転院搬送があります。ベッドの回転率が上がり救急受け入れの病床確保につながっています」(伊藤・救急救命士)
救急救命士科では24時間365日、いつでも出動できるように、救急車の資器材のチェック、サイレンや警光灯、車体の汚れや車内の衛生面には、とくに気を配っている。南浦笙・救急救命士は「安心して乗車していただくためでもありますが、毎朝行うメンテナンスは、救急救命士としての役割と責任を再確認する大切な時間です」。6月に入職した米澤蘭・救急救命士の指導にも熱心に取り組む。
救急救命士科では今後、地域活動の実施を構想。大澤・救急救命士は「周辺の小中学校でBLS(一次救命処置)講習や、医療系の学校へ出向いて救急救命士の業務内容を知ってもらうための出張講演など取り組んでいきたい」と抱負を語る。
菊地芽唯・救急救命士と熊谷京星・救急救命士は2月に開催した登録医会で、緊急を要する紹介患者さんを同院の救急車で迎えに行く取り組みなど紹介。地域の医療機関とのより密接な連携に意欲を見せた。
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徳洲新聞2025年(令和7年)6/16月曜日 NO.1496より
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