徳洲新聞2015年 2月2日(月)  NO.965

15年 2月2日(月)  NO.965

外国人患者受入れ拠点病院
徳洲会から3病院
日本医療教育財団が選定

徳洲会グループの札幌東徳洲会病院、千葉西総合病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は、「外国人患者受入れ環境整備事業」の拠点病院となった。
これは厚生労働省から委託を受けた日本医療教育財団が昨年末、国内でいち早く国際化を推進した10病院(表)を2014年度補助金事業の枠のなかで選定したもの。
徳洲会は20年以上前から海外医療を支援、ノウハウを蓄積してきたことが奏功した。

いち早い国際化を評価

外国人患者さんの受け入れは、単に診療内容を通訳するだけでなく、院内掲示、各種文書類の多言語化、医療コーディネーターの配置、食事などを含めた文化・宗教への配慮、保険会社との連携等々、きめ細かいサポートが必要だ。
湘南鎌倉病院と千葉西病院は、厚労省が12年に創設した「外国人患者受入れ医療機関認証制度」の認証を取得、札幌東病院は未取得だが、同認証の認定調査員が務めており、国際化に病院病院を挙げて取り組んでいる。

3病院は数年前から、それぞれ得意分野や地域性を生かし、外国人患者さんを診療。「今回の拠点病院応募に際し、改めて準備したことはありません」と担当者は口をそろえる。

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徳洲会は20年以上前からアフリカ、東南アジア、中南米を中心に、外国人医療従事者の研修受け入れや医療機器の寄贈、現地看護学校での看護師育成、大規模災害時の医療者派遣など海外医療支援に実績があり、2006年にはブルガリアにソフィア徳田病院を開設するなど、「職員がある程度、多文化交流に慣れています」と返答。

湘南鎌倉病院は「徳洲会病院の一員として、たとえ言葉が通じなくても医療を必要とする方を断ることはあり得ないというコンセンサス(同意)が、院内全体に浸透しています」と職員の気概に胸を張る。
↑ボランティア団体とも協力し24 時間対応を目指す札幌東徳洲会病院

3院とも全職員の語学能力を調査し、対応可能な言語を登録するなど、ヒューマンリソースを最大限に活用。
札幌東病院は、サハリンなど極東沿海州からの患者さんが多いことから、一般職員も院内の案内など簡単なことならできるようロシア語の想定問答集を作成。
千葉西病院は問診票や各種説明文書類を多言語化する際、日本語を併記するなど、各院が職員の語学力を補うさまざまな工夫を施している。

ただ、それでも対応しきれない言語や診療科、時間帯が存在する。
千葉西病院は「将来的には、周辺の病院と連携し、その病院の得意な診療科目や対応可能な言語、時間帯を登録、より患者さんを紹介しやすいシステムを構築したり、輪番制にしたりすることも考えています」と構想を明かす。
「外国人患者受入れ拠点病院」の要綱には、近隣病院に外国人患者さんが来院した際にアドバイスやサポートする役割も含まれており、地域の国際化に向け3院の主導的な動きが期待される。

 

今後の課題は、相手国の文化や宗教、生活背景に対する一層の配慮。
イスラム教徒の患者さんに向けた礼拝場所の確保や、ハラール(イスラム法で合法なこと)に対応した食事・療養環境の提供、患者さんへの理解を深めるため海外視察も行っている。
札幌東病院は、「サハリン視察前後で患者さんの訴えに対する理解度が変わりました」と、視察の効果を明かした。
3院の共通認識は、「医療の国際化は避けられない」ということだ。
経済産業省が全国の医療機関に12年に行ったアンケートによると、外国人患者さんの診療経験がある病院は18%に過ぎず、きちんと体制を整えている病院はほんのひと握り。
千葉西病院は、とくに日本在住の外国人の診療体制を早急に整える必要に言及。
現在、3カ月以上、日本に在住する外国人には国民健康保険加入が義務付けられているが、実際には外国人が言葉の心配なく受診できる医療機関は少なく、「保険料を支払っているのに、適切な医療が受けられないことがあってはなりません」と答えた。
今後、ビジネスや観光目的の訪日外国人はさらに増加する見通しで、20年には東京オリンピックも控えており、外国人患者さんの受け入れ体制整備は国として喫緊の課題である。

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