多くの徳洲会医療機関で職員に接種スタート 来る地域での接種へ準備も着々 新型コロナワクチン特集

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徳洲新聞2021年(令和3年)3/29月曜日 NO.1280より
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多くの徳洲会医療機関で職員に接種スタート 来る地域での接種へ準備も着々 新型コロナワクチン特集

全国的に新型コロナウイルスへの対抗手段として、まず最前線に立つ医療従事者などからワクチン接種がスタート、今後は高齢者や基礎疾患をもつ方、高齢者施設などの従事者、一般の方々へと順次、広がる予定だ。徳洲会グループの医療機関でも地域によってばらつきはあるものの、多くの病院や、診療所で職員への接種が始まり、この後に来る地域の方々への接種に向けて貢献するため、準備に動き出している。今号では新型コロナワクチン接種に関するグループ医療機関の動静などを紹介する。

「接種したからといって安心してはいけない」

ワクチンとは病原体に対する免疫力を高め、病気にかかりにくくするための薬で、多くはインフルエンザや麻疹など感染症に用いる。ワクチン接種の効果は主に①自身の感染、②発症後の重症化、③他者への感染──の3つを予防することだ。新型コロナの流行を抑えるため、きわめて重要な役割を果たすと期待されているのが新型コロナワクチン。日本は海外の製薬会社3社(米ファイザーとモデルナ、英アストラゼネカ)とワクチン供給契約を交わし、最初に薬事承認されたファイザー製の接種が2月17日にスタートした(モデルナ製とアストラゼネカ製は承認申請中)。現在、優先接種対象者の医療従事者に順次、実施している。

 

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「接種しても日々の基本的な感染対策が重要」と佐藤部会長

 

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遺伝子使う新たなタイプ

3社のワクチンについて、徳洲会グループ共同倫理審査委員会の事務局などを務める未来医療研究センターの歌田直人社長は「従来のワクチンと目的は一緒ですが、タイプが異なります」と指摘する。

具体的には、これまでのように弱毒化もしくは無毒化したウイルスや細菌をワクチンとして用いるのではなく、ウイルスの一部の遺伝子を人工的に作成して用いる点だ。

これは、ウイルス表面を覆っているスパイクタンパク質(ヒトの細胞に侵入するために必要)を遺伝子(mRNA)により設計し体内に投与すると、スパイクタンパク質が生成され、これを免疫細胞が異物と認識し抗体を生成、感染を予防するというわけだ。

ただし、mRNAは非常に不安定なため、細胞にきちんと取り込まれるように工夫が必要。ファイザー製とモデルナ製はmRNAを脂質ナノ粒子でコーティングする方法を用いている。一方、アストラゼネカ製は病原性がなく感染力の高い別のウイルスを〝運び屋〟(ベクター)として、同ウイルスにmRNAを組み込む方法を採用している。

宇治徳洲会病院(京都府)のICT(感染対策チーム)の篠塚淳・小児科副部長は「mRNAでスパイクタンパク質を作成するだけなら、遺伝子配列さえわかればできるのですが、安定して体内に届けることができませんでした。SARS(重症急性呼吸器症候群)流行時から開発が続けられ、今回、実用化に至りました」と解説する。

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「有効性と副反応を比較し後悔のない選択を」と篠塚副部長

効果と副反応とを天秤に

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3社のワクチンの接種方法はいずれも筋肉注射。日本ではインフルエンザをはじめワクチン接種の多くが皮下注射だが、新型コロナワクチン接種では、さらに深いところにある筋肉に針を刺さなければならない。これは血流が多く免疫細胞も豊富な筋肉のほうが、ワクチンの効果を得やすいと考えられているからだ。

接種回数は2回で3~4週間の間隔を開ける。2回接種することで、抗体をつくりやすくすると同時に、より多くつくり予防効果を高めるのが狙いだ。「抗体を産生することは体に記憶させることに近い。日本脳炎の予防接種などと同じ理屈です」と歌田社長。ただし、1回目の接種で、すでに体内に抗体ができているぶん、2回目のほうが、副反応が多く現れる可能性も指摘する。

対象年齢は現時点でファイザー製は16歳以上、モデルナ製とアストラゼネカ製は18歳以上とされている。また今のところ妊婦は対象外となっていない。

海外の治験結果から、発症を予防する有効性はワクチンによって70~90%以上。篠塚副部長は「予想を上回る効果です。たとえばインフルエンザは30~60%割程度。新型コロナワクチンもその程度だと思っていました」と驚きを隠さない。安全性についても「副反応は接種部位の疼痛(とうつう)や一過性の発熱、その他倦怠(けんたい)感や頭痛などが報告されていますが、重症のケースはまれです。アナフィラキシーというアレルギー反応にしても、もちろん注意しなければなりませんが、たとえばペニシリンなどの抗生剤と比べ、特別に頻度が高いわけではありません。副反応のない薬はなく、得られるメリットと比較することが大事です」と強調する。

接種後も感染対策は大事

最近、国内でも増えつつある変異株への効果に関しては、現時点では明らかになっていない。徳洲会感染管理部会の佐藤守彦部会長(湘南鎌倉総合病院感染対策室部長)は「新型コロナはRNAウイルスだから変異しやすい。インフルエンザもそうですが、スパイクタンパク質が複数の種類に分化すると、それに合ったワクチンでないと効かない可能性もあります」と説明する。

歌田社長も「接種した人全員が効果を得られるわけではありません」と注意喚起。篠塚副部長も「貴重なワクチンだからこそ、強制ではありません」とし、「接種後の副反応で接種しなければ良かったと思う人、接種しなかったために大事な人が感染してしまい接種しておけば良かったと思う人、どちらの可能性もあります。接種前に厚労省のホームページを参考にしたり、かかりつけ医に相談したりして、後悔のない選択をしていただきたいと思います」と呼びかける。

佐藤部会長は手指衛生など基本的な対策のうえにワクチン接種がある点を強調し、「ワクチンを接種したからといって、安心してはいけません」と訴えている。

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ファイザー製のワクチン

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