徳洲新聞2026年(令和8年)10月05日 月曜日 NO.1563より 詳細は「徳洲新聞ニュースダイジェスト」をご覧ください。
一般社団法人徳洲会は9月19日から2日間、神奈川県の湘南国際村センターで「第4回徳洲会国際心臓血管セミナー in 葉山」を開催した。テーマは「Focus on Mitral Valve(僧帽弁治療の最前線)」。日本、米国、インドネシア、コロンビア、インド、ニュージーランドの専門家が計29演題(うち徳洲会から17演題)発表した。会場には2日間で延べ266人が来場し、オンラインでは延べ610人が視聴。参加者のうち4割がグループ外からで、心臓血管外科医を中心に幅広い職種が集まった。
今回は内科系会長を千葉西総合病院の桃原哲也・副院長兼循環器内科主任診療部長、外科系会長を湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の伊藤敏明・院長補佐兼心臓血管外科統括部長(医療法人徳洲会心臓血管外科特別顧問)が務め、過去3回連続で会長を務めた葉山ハートセンター(神奈川県)の浅井徹・心臓血管外科特別顧問は統括会長に就任した。
主催者は東上震一理事長。実行委員長には大橋壯樹・副理事長(名古屋徳洲会総合病院総長)、企画委員長には新田隆・医療法人徳洲会心臓血管外科顧問(羽生総合病院循環器統括顧問)が名を連ね、徳洲会グループを挙げて運営体制を築いた。
初日の開会式で東上理事長は、徳洲会の歴史や”生命だけは平等だ”の理念に言及するとともに、国際的な医療協力の進展や同セミナーの意義を強調、参加者間の活発な議論と交流に期待を寄せた。さらに、浅井・特別顧問、桃原副院長、伊藤・院長補佐も挨拶。その後、徳洲会プレセッションとして、全国のグループ病院から11演題の発表があり、最新の知見や技術を共有した。
セッション1「僧帽弁疾患の現在」では、浅井・特別顧問が「僧帽弁形成術の限界を引き上げる:最難関病変に対する再建戦略」と題し講演した。
僧帽弁形成術での自身のこだわりとして、高難度の症例でも再現可能で堅牢な形成を行うことの重要性を指摘。急性心筋梗塞にともなう乳頭筋断裂や、破壊の激しい複雑な感染性心内膜炎といった最難関とされる症例の映像を提示しながら、具体的な弁形成手技や人工腱索の設置、心膜パッチを用いた再建法などを詳細に解説した。病変や全身状態の厳しさに臆することなく、残存組織を的確に見極めて、最適な再建戦略を立てることの大切さを訴えた。
今回、初めての試みとして「ビデオライブセッション」を実施。心臓血管外科領域では、伊藤・院長補佐が「Endoscopic MVP TAP Maze」の映像を提示。内視鏡を用いた僧帽弁形成術および三尖弁形成術、心房細動に対するメイズ手術を組み合わせた低侵襲かつ高精度な手術手技を紹介し、活発なディスカッションを展開した。
セッション2「弁膜症ロボット手術」では、千葉西病院の中村喜次副院長が「ロボット支援で追求する Durable Mitral Valve Repair」をテーマに講演し、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた僧帽弁形成術の導入実績と手技の優位性を解説した。高精細な3D画像や精密な関節機能により、小切開かつ低侵襲でありながら、高度で耐久性の高い弁形成が可能となることを豊富なデータと映像で示し、今後の低侵襲心臓手術の方向性を示した。
セッション3「低侵襲僧帽弁手術の進化」の終了後に懇親会を実施。恒例となったマグロの解体ショーなども行い、国内外の参加者同士が親睦を深めた。

「活発な議論と交流を」と東上理事長

統括会長の浅井・特別顧問

内科系会長の桃原副院長

外科系会長の伊藤・院長補佐

閉会式で挨拶する大橋・副理事長

会場には2日間で延べ266人が来場し多職種が集まり大いに議論

国際的なエキスパートを多数招聘 外科・内科が混ざり合い白熱議論
2日目は、セッション4「僧帽弁治療の現在と未来」からスタート。桃原副院長が「僧帽弁治療の将来像、私の考える近未来」をテーマに講演した。
僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(経皮的僧帽弁接合不全修復術:TEERなど)の現状と課題を整理したうえで、超高齢社会を迎えた日本での低侵襲治療の役割について展望を語った。とくに、外科的手術とカテーテル治療の適応や、両者が対立するのではなく相乗効果を生み出す「競走と協奏」の重要性を説き、ハートチーム全体で患者さんにとって最善の治療を選択する未来像を描き出した。
「Mayo Clinicスペシャルセッション」も開き、米国メイヨークリニックから招聘したアビシェク・J・デシュムク医師とグルプリート・S・サンドゥ医師が登壇。心電図解析での人工知能(AI)の臨床的インパクトや、ドローン・ロボティクス・ナノテクノロジーを融合させた心筋梗塞介入治療の進化など、最先端の技術革新とその臨床応用について講演した。
「ビデオライブセッション」の循環器内科領域では、湘南鎌倉病院の松本崇・循環器内科部長が「MitraClipによるM-TEER」の映像を供覧した。
MitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復システム)は心エコーガイド下で、脚の付け根の大腿静脈からカテーテルを挿入して行う治療。右心房から心房中隔穿刺を行い左心房にカテーテルを導き、カテーテル先端のクリップを用い、適切な位置で前尖と後尖をつかんで弁を形成する。実際の操作とエビデンスをわかりやすく解説し、ディスカッションも盛り上がった。
セミナーの最後を飾るセッション5「重症僧帽弁閉鎖不全症の治療戦略」では、伊藤・院長補佐が「鏡視下僧帽弁手術の発展的応用」と題し講演。
完全胸腔鏡下手術(MICS)の基本手技から、活動性感染性心内膜炎や高リスクの再手術症例、心筋焼灼術や左心耳閉鎖術を併施する複雑症例への応用まで、自験例の術野映像を交えて詳述した。低侵襲性を維持しながらも、開胸手術と同等以上の高い完成度と安全性を追求する手技の工夫を提示、参加した外科医らにとって非常に実践的な内容となった。
すべての演題が終了し、閉会式に大橋・副理事長が登壇。2日間、活発な議論を交わした演者、座長、コメンテーター、ならびに国内外からの全参加者と運営スタッフに対し、深い感謝の意を表した。さらに、本セミナーを通じて得られた最新の知見とグローバルなネットワークを各施設での日々の臨床に還元し、患者さんのために、さらなる質の高い心臓血管外科・循環器医療を提供していくことを誓い合い、セミナーは盛況のうちに幕を閉じた。
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