中部徳洲会病院「腹部総合ヘルニアセンター」を開設沖縄県初の成人腹部ヘルニア全般に対応

徳洲新聞2026年(令和8年)2/2月曜日 NO.1528より
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中部徳洲会病院(沖縄県)は腹部総合ヘルニアセンターを開設した。鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアをはじめ、成人に発症する腹部のヘルニア全般に対応する。沖縄県では初。昨年9月に着任した井谷史嗣センター長による取り組みで、すでに開腹や腹腔鏡による手術を実施。1月には県下初のロボット支援鼠径ヘルニア手術(公費診療)も行った。井谷センター長は“精密で安全な低侵襲医療の提供”を目指すとともに、後進育成にも努め、県全体のヘルニア診療レベル向上に貢献する意向だ。

井谷センター長と鹿川・副センター長の写真

井谷センター長(右)と鹿川・副センター長は地域医療のレベルアップに意欲

ロボット支援鼠径ヘルニア手術も県下初

ヘルニアは体内組織の弱い部分や臓器の隙間から、内臓の一部、腸、脂肪などが突出する病気の総称。一般的に足の付け根(鼠径部)に生じる「鼠径ヘルニア」、背骨や胸椎、腰椎などで起こる「椎間板ヘルニア」が知られているが、それ以外にも「食道裂孔ヘルニア」や「会陰ヘルニア」など、さまざまな種類がある。いわゆる、“でべそ”も腸や脂肪が臍部にはみ出た状態で「臍ヘルニア」と呼ばれる。

原因は加齢や肥満、妊娠などが挙げられるが、過去に受けた腹部手術の部位が弱くなって起こるケース(腹部瘢痕ヘルニア)は、術後20%程度まで発生するとも言われている。症状はヘルニアの位置などによって「しこりやふくらみが見られる」、「痛みを感じる」などさまざま。無症状の場合もある。

また、緊急性を要しないケースが多いものの、たとえば腸が入り込んで戻らなくなった場合、絞扼(組織や血管などが圧迫される状態)となり血流が悪化、壊死して穴が開き腹膜炎を来し緊急手術となることもある。治療法は手術のみ。薬物療法などではヘルニアを根本的に治すことはできない。

井谷センター長は、昨年9月に中部徳洲会病院に着任後、体制を整え成人の腹部ヘルニア全般を対象とするヘルニアセンターを開設。「腹部のヘルニアは種類が多く、鼠径はもちろん、食道裂孔ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなども患者数は少なくありません」と指摘し、「とくに鼠径ヘルニアはコモンディジーズ(日常的に見かける疾患)ですが、きちんと治療するには一定程度の知識と技術が必要であり、外科のなかでも大切な分野のひとつと考えています」と説明する。

これまで手がけた腹部ヘルニア手術は1,000例を超え、腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術も得意分野のひとつに掲げる。

沖縄県下に成人の腹部へルニア全般に対応するヘルニアセンターはなく、同センターが初。消化器外科の鹿川大二郎医長が副センター長を務め、外科の医師が協力する体制で、内視鏡手術を中心に安全かつ低侵襲な診療を心がける。井谷センター長の豊富な経験を生かし、一般的な症例であれば鼠径ヘルニアは片側1時間程度、食道裂孔ヘルニアは2時間程度で手術を実施。井谷センター長と鹿川・副センター長は難易度の高い症例を中心に執刀し、比較的低いケースでは若手の外科医師が執刀、そばで井谷センター長らが指導するなど後進育成にも余念がない。

沖縄のヘルニア診療レベル向上へ

同センターは院内の倫理審査委員会を経て、1月に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた鼠径ヘルニア手術を開始。まず公費診療で2例実施した。ロボット支援鼠径ヘルニア修復術は沖縄県で初めて。

執刀した井谷センター長は「いずれも腹腔鏡手術と遜色ない手術時間、安全性で実施できました。ロボットの立体・拡大視野と多関節アームを用いることで、再発など、より難度の高い状況や肥満の患者さんに対して安全に行える可能性が高いメリットがあります」と強調。その要因に、①複数の診療科でロボット支援手術の実績があり、鼠径ヘルニアに関しても腹腔鏡手術を標準的に行い手術室などスタッフの協力が得られやすい、②日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医、日本内視鏡外科学会技術認定、日本ヘルニア学会の鼠径部ヘルニア修得医を取得しているスタッフが在籍、③複数のロボット支援大腸手術のプロクター(指導医)を有していること──を挙げた。

いずれも経過は良好だが、術後早期で、「合併症が出る可能性がないとは言いきれず、引き続き注意して対応します」と井谷センター長。今後も精力的に活動を展開し、「沖縄全体のヘルニア診療レベルの向上に貢献したい」と意欲を見せる。

徳洲新聞2026年(令和8年)2/2月曜日 NO.1528より
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