三尖弁へのカテーテル治療「TriClip」 導入湘南鎌倉病院が国内3施設目・徳洲会で初 薬物療法以外有効手段のない患者さんに新たな選択肢

徳洲新聞2026年(令和8年)4/27月曜日 NO.1540より
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湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は三閉鎖不全症に対し、「TriClip」を用いたカテーテル治療を初めて行い奏功した。国内で3施設目、徳洲会グループでは初。これまで外科手術のリスクが高く、薬物療法以外に有効な手段がなかった患者さんにとって新たな選択肢となる。同院は三尖弁治療のトップランナーとして、国内での安全な普及と手技の確立を牽引していく。

心臓の右心房と右心室の間に位置する三尖弁、この外科手術はきわめてリスクが高く、松本崇・循環器内科部長は「三尖弁単独の外科手術は、術後死亡率が10%程度に達することもあります」と指摘。同院でも三尖弁の外科手術が適応となる患者さんは年間2~3例に限られており、多くの高齢患者さんや併存疾患をもつ患者さんは、手術を断念せざるを得ない状況にあった。

「日本全体の治療レベルを底上げしていきたい」と松本部長

対症療法として利尿薬などを用いる薬物療法もあるが、根本的な解決には至らず、患者さんは入退院を繰り返しながら徐々に体力を奪われていく生活を余儀なくされてきた。

こうした「治療の空白」を埋めるのが、TriClipを用いたカテーテル治療。同治療は脚の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、三尖弁の弁尖同士をクリップでつなぎ合わせることで、逆流を物理的に抑制する。開胸の必要がない低侵襲な手技のため、術後の回復が早いのが特徴だ。

松本部長(左から2人目)をはじめとするTriClipの治療チーム

同院では3月3日の1例目を皮切りに、週1回のペースで治療を継続。患者さんは最短で手術の翌々日に退院できるほど、良好な経過をたどっている。

ただし、TriClipの手技は、きわめて難易度が高い。先行して普及している僧帽弁用の「MitraClip」と比較しても、カテーテルでデバイスを弁まで運ぶ段階から困難を極める。その最大の要因は、手技のガイドとなる経食道エコー(超音波)の画像精度。三尖弁は食道から物理的な距離があるため、超音波のビームが到達するまでに減衰してしまい、モニターに映し出される画像が鮮明になりにくい。

松本部長は「エコーの映像を頼りに、クリップが正しく弁をつかんでいるかを評価するのは、高度な技術を要します」と説明。こうした状況下でも同院が国内3施設目という早期導入を実現できた背景には、これまで積み上げてきたMitraClip治療の豊富な実績と、エコー医である水野真吾・循環器内科部長との強い連携があったためだ。

トップランナーとして 日本の治療レベル底上

現在、日本国内でTriClip治療を実施しているのは、同院を含む14施設のみ(4月1日現在)。日本循環器学会が定める施設要件は厳しく、術者のMitraClip経験数なども問われる。同院では現在、松本部長が唯一の認定術者だが、次世代の術者育成も進めている。

同院の強みは「ハートチーム」の強固な連携にある。三尖弁閉鎖不全症を含む弁膜症の治療は、カテーテル治療を行う循環器内科だけでなく、手術を担当する心臓血管外科のサポートが不可欠。

伊藤敏明・心臓血管外科統括部長率いる心外チームは、小切開で低侵襲な手術(MICS)でも国内屈指の実績をもつ。松本部長は「高い技術をもつ外科チームがいてくれるからこそ、われわれも安心して治療に専念できます。さらに、外科と内科が互いの限界と強みを理解し、ひとりの患者さんに対してベストな選択肢を提示できます。この連携があるからこそ、患者さんに安心して治療を提供できます」と胸を張る。

同院は治験段階から同治療にかかわってきた経緯があり、松本部長は現在も治験施設と月1回のミーティングを実施。国内での最適な治療プロトコル(計画書)の確立に奔走している。海外では心腔内エコーを併用する手法も存在するが、国内では現行の経食道エコーを用いる手法を、いかに高い精度で標準化していくかが課題だ。

松本部長は「自分たちの施設だけが良ければいいのではない。三尖弁治療のトップランナーとして、日本全体の治療レベルを底上げし、より安全に普及させていく責任があると考えます」と、今後も日本全体の循環器医療を牽引していく構えだ。

徳洲新聞2026年(令和8年)4/27月曜日 NO.1540より
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