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徳洲新聞2020年(令和2年)12/7月曜日 NO.1265より
詳細は「徳洲新聞ニュースダイジェスト」をご覧ください。
人工膵臓装置 術後の血糖を自動的に厳格管理 湘南藤沢病院がグループで2病院目
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は人工膵臓(すいぞう)装置を導入し、術後の血糖コントロールを行っている。主に糖尿病のある方、膵臓や肝臓の大きな手術を受けた患者さんが対象で、術後高血糖による合併症のリスク軽減、予後の向上が狙い。
合併症減り予後向上へ
人工膵臓療法に携わる(左から)清水直子・看護主任、種村部長、臨床工学科の横路秀之・副技士長、藤巻美穂主任、新田真司副主任
湘南藤沢病院が導入した人工膵臓装置は、ベッドサイドに配置するタイプ。主にモニター画面とグルコースセンサー、インスリンやグルコース、血液を入れるためのバッグからなる。2016年に同装置を使用した周術期の血糖コントロールが「人工膵臓療法」として保険適用となった。
実際の治療では、まず患者さんに応じて目標となる血糖値の範囲を設定。そのうえで連続的に1時間当たり2㏄を静脈採血し、グルコースセンサーにより、毎秒2回のペースで血糖値を測定、持続的にモニタリングする。高血糖であればインスリン、低血糖であればグルコースを独自の演算式に基づいて適宜、全自動で静脈注入し、適正な血糖値を保つ仕組みだ。
人工膵臓装置はベッドサイドに配置
モニターには血糖値やインスリン、グルコースの注入率がグラフで表示され、記録もできる。静脈の塞栓防止のため、各種液バッグにはインスリンやグルコース以外に生理食塩水も使用する。
目的は、手術前後の血糖管理を的確に行うことで、合併症のリスクを軽減し、予後の改善を図ることだ。同装置を活用することで①リアルタイムの連続血糖測定、②目標血糖域に沿った血糖管理、③血糖変動が少なく安定、④低血糖発作の回避、⑤頻回の血糖測定にともなうインシデント(ヒヤリ・ハット)回避、⑥適切な栄養管理との両立――などに基づいた血糖管理が可能だ。
一般的に、手術の成否を左右する要因のひとつとして「周術期の管理」が挙げられ、管理すべきもののひとつに血糖がある。全身麻酔を含め手術侵襲で身体にストレスがかかると、炎症性サイトカイン(炎症反応の促進機能をもつ免疫系細胞から分泌されるタンパク質)や、酸化ストレス(酸素が体内の細胞や組織などに結び付き引き起こされる有害な作用)が増加し、インスリン分泌能の低下、糖の過剰産生など血糖の調節機能が崩れやすい。
加えて、術後の栄養介入として高カロリー輸液の投入などもあり、血糖異常が起こりやすくなる。その結果、臓器や細胞の機能が低下、感染症や臓器不全など重篤な合併症につながるケースもある。
モニター画面。コンピュータ制御でインスリンやグルコースを自動注入
同院の種村宏之・外科部長は「なかでも術後の高血糖は、創部感染、創傷治癒の遅延、神経障害、術後死亡率の上昇といった悪影響を及ぼす可能性があり、厳格な血糖コントロールが欠かせません」と指摘。
「とくに、こうした傾向は膵臓や肝臓など血糖を調整する消化器領域の手術で見られます。切除や全摘出など侵襲が大きい手術、糖尿病など基礎疾患のある患者さんや高齢の患者さんの手術だと、さらに顕著ですが、日本外科感染症学会の『消化器外科SSI(手術部位感染)予防のための周術期管理ガイドライン』では、糖尿病の有無にかかわらず、具体的な血糖値を示し、厳格な管理を推奨しています」。
今まで同院では、看護師や医師が数時間ごとに病室を訪れ採血を行い、スライディングスケール(血糖値に応じたインスリン量の目安表)などに基づき周術期の血糖を管理していた。しかし、大量肝切除や膵臓の全摘術の予定患者さんなど、合併症リスクの高い方がいる場合、「いかにリスクを減らせるか考えた結果」(種村部長)として、人工膵臓装置の導入に踏みきった。
装置のセットアップに余念がない藤巻主任
施設基準を満たすなど体制を整え、6月から人工膵臓療法を開始。同装置をICU(集中治療室)に配意し、大きな侵襲をともなう手術を行った患者さん8人に使用した。いずれの症例も合併症を生じず、入院期間の長期化もなく退院した。
今後、同院は術後に限らず患者さんの血糖管理などにも活用していく方針。種村部長は「限られた資源ですから同装置を使うほどの管理が必要ない方は従来の方法で対応します。血糖コントロールが必要な患者さんは増えていくと予想され、今後も合併症のない治療を提供するために努力を惜しみません」と意気込みを見せる。同装置の導入は地元の湘南エリアで初。徳洲会グループでは宇治徳洲会病院(京都府)に続き2施設目。
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