徳洲新聞2015年 3月2日(月) NO.969

photo969_01徳洲新聞2015年 3月2日(月) NO.969

名古屋徳洲会総合病院
カテーテルアブレーション治療
心房細動に対し新評価法

名古屋徳洲会総合病院は心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション治療の新評価法を実践、好成績を収めている。AFは心房内の異常な電気の流れによって不整脈を引き起こす疾患。新評価法は従来法より高い精度で、その異常な電気の流れをカテーテルアブレーションで遮断できたか確認することが可能。術中に評価し、電流が遮断できていなければ、その場で再治療するため、1回の手術での成功率は90%。AF患者さんのQOL(生活の質)向上に大きく寄与している。

1回の手術で成功率は90%

AFは心房につながる4本の肺静脈から、何らかの原因で異常な電気的興奮が発生、それが心房内に伝わり、不整脈を引き起こし、心房の収縮機能が低下する疾患。
強い動悸(どうき)や胸部不快感を覚えることも多いが、なかには自覚症状がないまま徐々に心機能が低下し、心不全を来したり、脳塞栓など致命的な障害を併発したりすることもある。

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、肺静脈と心房のつなぎ目付近の心房の内面を焼灼することで、肺静脈と心房の電気的なつながりを断ち、心房の正常な収縮を取り戻す肺静脈隔離術(PVI)を中心とする治療法。
薬物療法と違い根治が可能だ。

従来、PVIは術後、ATPという薬剤を用い、手術の成否を評価。
しかし、ATPは心房から肺静脈への興奮伝導の有無を確認することはできるが、肺静脈から心房への伝導は評価できず、評価精度に問題があった。

そこで名古屋病院循環器内科の加藤千雄医長は、肺静脈から心房への伝導を確認する高周波刺激法(HFS)を考案、ATPと併用することで両方向性に確認でき、手術の成否をより高い精度で評価することを可能にした。

HFSは、心房につながる左右上下4本の肺静脈の周囲の心房を焼灼後、最も焼灼が難しいPVカリーナに20V/20Hz10msの高周波刺激を5秒以上継続して流し、興奮伝導の有無やその後の心房の洞調律を確認する。

加藤医長はAFに対しカテーテルアブレーション後、術中にATPとHFSを併用。
興奮伝導が遮断できていなければ、その場で追加焼灼を施行する方針としたところ、以後は同法実施後の発作性AFの再発例がなく、持続性、発作性AFを含めた洞調律維持率は90%程度。
一般的に1回目手術の成功率は70~80%程度と言われ、好成績であることがわかる。

ただ、無再発群のなかに実際には再発したにもかかわらず病院に来院しなかった例もないとは言えず
「母数が少ないため、1人の行動が成功率に大きく左右する状況。今後は症例数を増やし、より信頼性の高いデータにしていきたい」
と、加藤医長は抱負を語っている。

 
↑「精度の高い術後評価は、患者さんのQOLに貢献できます」と加藤医長

MEが最優秀演題賞

HFSの有効性調査に全面協力した柴田典寿・臨床工学技士(ME)は2014年、MEの視点からHFSの研究結果をカテーテルアブレーション関連秋季大会で発表、コメディカル部門の最優秀抄録演題賞を受賞した。

同院はすでにATPとHFSの併用がスタンダードな評価法となっているが、独自の評価法だけに他施設での実施例はなく
「学会に参加した方々にとっても画期的なことだったようで、多くの質問をいただきました。座長にも大変良い評価法だと声をかけていただきました」
と柴田ME。

加藤医長は今後、HFS施行例をさらに積み上げ、4月に開催される第79回日本循環器学会学術集会などで順次、その効果を発表していく考えでいる。

「ATPとHFSの併用は、PVIの手術回数が減らせるという点で、何より患者さんのQOLに大きく貢献できる評価法です。広く周知し、スタンダードな評価法にしていきたい」
と意気込む。

また、後進の育成にも力を入れる方針。不整脈は需要に比して専門医数が少なく、加藤医長は若手医師に
「高難度のカテーテルアブレーションから研究まで、スキルアップをお手伝いできると思います。ぜひ一度、当院を見に来てください」
と呼びかけている。
↑柴田ME(中央)は加藤医長(左)の指導の下、HFSについて発表。関連学会で最優秀演題賞を受賞

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